Alan Kayの研究所が転籍する節目に立ち会う (SAP CDG→YCR HARC)

投稿者: 加藤 淳
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カテゴリ: discussion, research, sigpx, travel

先週までの 2 週間、ベイエリアのさまざまな研究所・企業を訪問し、ACM CHI 2016に参加していました。一部の旅程で同行した小山君川松氏ともども、さまざまな方々にお世話になりましたが、個人的にはパーソナルコンピュータの父とも呼ばれる Alan Kay の研究所Viewpoints Research Institute (VPRI)で研究紹介・議論をするのが主目的でした。

ご招待くださった大島さんには大変感謝しています。Alan 氏は不在でしたが、みんな忙しいなか、主要メンバーほぼ全員とみっちり議論する時間をいただくことができました。

Communication Design Group, Los Angelesオフィスのエントランス
Communication Design Group, Los Angelesオフィスのエントランス

Y Combinator Research HARC

VPRI はソフトウェア企業 SAP が設立したCommunication Design Group (CDG) Labsとメンバーの重複があり、CDG は VPRI のあるロサンゼルスとは別にサンフランシスコにもオフィスを持っていまし。「た」と過去形なのは、私が各オフィスを訪問する前後に組織再編があったためです。

VPRI/CDG のロサンゼルスオフィスを訪問した翌週にサンフランシスコオフィスを訪問したところ、グループ丸ごと所属が新しい研究所に移っていました。その行き先が先週公に明らかになり、研究界隈のみならず、スタートアップ界隈を巻き込んでニュースになっています。CDG は、Y Combinator Researchの OpenAI, Basic Income に続く 3 本目の柱HARCとなったのでした。

Alan Kay は ACM CHI 2016 最終日の Plenary talk にも出演し、60 年代の自由闊達な研究開発環境について言及していました。Alan 氏は、SAP CDG が設立された際の記事からも明らかなように、ARPA や、それに続く Xerox PARC 時代の研究環境を理想のモデルとしています。

VPRI のスポンサー歴を見ると、そのような環境を維持し、発展させるためにどれだけ尽力したかが見えてきます。前述した ARPA→Xerox PARC のあとも、ATARI→Apple→Disney→hp→SAP というふうに、錚々たる企業が Alan 氏の理想を支えてきたんですね。HARC は、Y Combinator という強力な後ろ盾を得てそのような環境をまた作ろうという試みなわけです。

Center から Community へ

HARC は、PARC が一文字変わっただけのように見えますが、実際には Palo Alto Research Center から Human Advancement Research Community へと、R 以外のすべての略語の中身が変わっています。

立ち上げに際し PI らが書いた文章によれば、研究領域はプログラミング言語、インタフェース、教育、そしてバーチャルリアリティ(VR)のようです。Alan 氏のビジョンが全くぶれていないので根っこはずっと同じですが、どれもホットトピックであり、大島さん (転職エントリ)や Bret Victor (Inventing on Principle), Vi Hart (YouTube)など強力な PI のもとで面白いことをやってくれるはずです。

アウトサイダーとしては、Center から Community へ、世界に開かれた研究組織としての役割を期待しています。アカデミアとも産業界とも異なる独特のバランス感覚で、諸分野の研究者、エンジニアと革新的な研究開発を行っていくに違いありません。

追伸; 僕も混ぜてくださいね! ;)

Communication Design Group, Los Angelesオフィス (HARC移籍に伴いobsoleteに…)
Communication Design Group, Los Angelesオフィス (HARC移籍に伴いobsoleteに…)