情報科学系 海外研究インターンのすすめ〔前編〕

投稿者: 加藤 淳
投稿日:
カテゴリ: research, student, university

ACM CHI 2015 全論文の概要を一日で把握するCHI 勉強会 2015へのご参加ありがとうございました。幹事団の一人として御礼申し上げます。東京会場では、メインプログラムのあと懇親会までの準備時間に企業紹介と海外インターン経験談紹介のセッションを開催しました。インターン経験の紹介セッションでは、僕と、Microsoft Research Asia/Redmond, Disney Research, ATR で研究インターンを経験した学生たちがプレゼンしました。

これまで、さまざまな機会に海外での研究インターン経験について紹介し、とくに博士課程の人たちにおすすめしてきました。より多くの人に参考にしていただけるよう、発表資料を改めて記事化しておきます。まずは〔前編〕として、概要と、どうやってインターンに参加するのか、また、いつ参加するといいのか紹介します。

インターン期間中・期間後に起きることを紹介した後編もよろしくお願いします。Microsoft Research Asia に行ったときの経験については、北京に 4 ヶ月住んだ話に詳しく書いてあります。

Microsoft Research Redmond (Building 99)
Microsoft Research Redmond Building 99の吹き抜け

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僕は、修士のときMicrosoft のソフトウェアエンジニアインターンとして、また、学内ベンチャーキャピタル UTECのサマーインターンとして働いたことがあります。その後、博士課程に進学し、Microsoft Research Asia (北京)Redmond (アメリカ本社)Adobe Creative Technologies Labの Seattle キャンパスで研究インターンとして働きました。全ての経歴は英文レジュメに書いてあります。この記事では、研究インターンに絞って概要を紹介します。

海外大企業での研究インターン

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企業での研究インターンは、論文で名前を見たことのある人たちに会えるまたとない機会です。また、同期のインターン生と知り合うことができ、将来に渡って交流が続くこともあります。多くの大学と違い、ソフトウェアエンジニアやデザイナーなど他職種の人たちが近くで働いており、協力を依頼したり、共同作業することもあります。

大企業の研究インターンは、研究部門の準主戦力です。研究テーマはある程度メンターから指定されることもありますが、実際に手を動かして議論を行い研究を推進するのは研究インターンです。部外秘のプロジェクトにアサインされることもあります。こうして遂行した研究プロジェクトは、情報科学分野では多くの場合学術論文として発表することを認めてくれます。その成果は、インターン生の学位論文に含めても大丈夫なことが多いです。

アメリカ大企業の研究インターンは給与がとくに高いことで有名ですが、それだけでなく非常に恵まれた研究環境です。

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アメリカの情報科学系企業で飲み物が無償だったりするのは有名ですね。現地のさまざまなお店の料金が割引になるカードやバス乗り放題のカードなど、正社員のような福利厚生サービスが受けられます。海外から来ている人には、ビザや住む場所も提供してくれます。とても過ごしやすい環境です。

インターンに参加する方法とタイミング

では、海外の研究インターンに参加するにはどのようなことが必要なのでしょうか?一言で言えば「インターン先とのコネクションを作ること」です。コネというと聞こえが悪いですが、逆にインターンを雇う立場(研究者)になって考えてみてください。正体の分からない学生は雇いにくいでしょう。そこで、どうにかして研究者に知ってもらうことが必要なのです。

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Fellowship とは、Microsoft Research Asia Fellowshipのように、研究所が研究者を雇うときのような選考プロセスを経て授与する賞です。たとえ受賞を逃しても、その過程で研究者に気に入ってもらえれば、インターンできる可能性が大きく上昇します。指導教官や、研究所の産学連携担当者に紹介してもらうのも手ですね。あとは、国際会議に参加して、自分の研究を紹介して話を聞いてもらうとよいでしょう。このとき、何も発表がないときっかけをつかむのが難しいですが、ポスター・デモ・登壇発表があれば、その関係で話しかけることができます。CHI で開催したシンポジウムは、そのためのきっかけに使ってもらうことが目的の一つでした。

僕の場合、まず Fellowship 経由で Microsoft Research Asia に行けました。その過程で Redmond の研究者に知ってもらうことができ、Redmond インターンに行けました。さらに、国際会議でアピールした結果 Adobe でインターンできました。これだけいろいろな場所へ行けたのは、相当運がよかったのだと思います。ただ、行きたいと思って機会を探し続けたことは、間違いなく、必要条件でした。

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もう一つ大事な観点は、いつインターンに行くかということです。基本的にここに書いた通りですが、学士を取ってくれる研究インターンはとても少ないと思います。修士でも、よほど強いコネクションがないと国際会議で論文を出したことがないと難しいかもしれません。博士課程に入って成果が出始めた頃が最も一般的なようです。

僕個人の反省として、博士課程 3 年目で博士論文を書いている期間にインターンに行くと地獄を見ます。Adobe の頃ですね。昼は企業に尽くし夜は論文執筆を…あっ思い出したら胃が痛くなってきた。

とりあえず前編はこの辺で。後編に続きます。