アニメの研究課題が採択・Visual Computing招待講演

投稿者: 加藤 淳
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カテゴリ: anime, research, creativity

アニメの研究開発について、大きなお知らせが二件と、内容面で関連の深いご報告が一件があります。

JST CRONOS

まず、JST CRONOS という研究推進事業にて、私が代表として提案した研究課題「高融合性ツール基盤技術によるアニメ共創環境の実現」が採択されました。 分担は株式会社オー・エル・エム・デジタル 研究開発部門 Head of Research の前島 謙宣さん、東京大学大学院工学系研究科 准教授の小山 裕己さんです。

これから 5.5 年間かけて、2031 年 3 月まで進めていくプロジェクトの愛称は「Animāre(アニマーレ)」としました。ラテン語の原義「命を吹き込む」とプロジェクトのねらいにかけた名前です。

学際的で多様な研究アプローチを結集させながら、アニメ制作現場と手を携えて課題解決していく産学コミュニティを作っていきたいと思います。 そのためには、みなさまのご協力が欠かせません。何卒、何卒よろしくお願いいたします。


JST さきがけ

また、JST さきがけ「人間中心インタラクション」領域で、個人型の研究提案「共創的コンテンツ制作を支える時系列共有支援技術」が採択されました。 アニメの制作進行職などに顕著な現場の課題について、入念な調査研究を行い、プログラミング言語と LLM や GUI の HCI 技術をかけ合わせて解決することを目指します。

CRONOS の「Animāre(アニマーレ)」は加藤・前島・小山 各グループの強みを活かしたチームワークで、アニメ制作の各工程におけるクリエータの支援、そして産学のコミュニティづくりに主眼を置いています。一方こちらは、制作進行職という工程全体を見るマネジメント職が備える職能について扱う基盤的な研究です。具体的には、(応用としてはアニメに限らない)役割を割り振り、工程を管理し、多種多様なデータを臨機応変に共有しながら遅滞なく制作を進めていく難しさを解きほぐし、支援することを目指します。

アニマーレがいわゆる創造性支援を直接に狙ったものであるのに対し、こちらは生産性支援に見えるかもしれませんが、生産性支援できる部分をしっかり情報技術で抑えることにより、かえって制作進行の発揮している創造性が浮き彫りになるのではないかと思っています。 それぞれに進めていくのが楽しみな研究課題ですが、応用先としてまずアニメ産業を想定している点、私個人の担当範囲が大枠で「ツールの科学」に関する興味に基づく研究である点は共通しています。 そして何より、どちらも、これまでさまざまな方々と重ねてきた議論の末に生まれた課題です。

ぜひ、これからもみなさんのご協力を賜りながら進めていきたいと思います。


Visual Computing 2025 チュートリアル講演

時系列が前後しますが、CG 分野の国内会議 Visual Computing 2025 チュートリアルにて、そうそうたるメンバーに混じって招待講演とパネル登壇の大役を務めさせていただきました。

ACM CHI 2024 で絵コンテ制作ツールに関する研究発表を行いましたが、登壇時間はわずか 12 分でした。今回は日本語で、たっぷり時間をかけて詳細に、私のこれまでのアニメ研究の取り組みと、その面白ポイントを語ることができました。 機会をくださったみなさま、聴講いただいたみなさま、ありがとうございました。 ここでも、一番伝えたかったメッセージは同じです。

「みなさんもぜひ、アニメづくりを支える研究開発をご一緒しましょう!!!」

産総研では、これから CRONOS とさきがけでアクセル全開にふかしていきます。兼業先のアーチにも、社外に門戸を開く "技術部" というチャンネルがあります。ご興味ある方はぜひご連絡ください!